井の頭歯科

「家族終了」を読みました

2019年6月7日 (金) 09:18

酒井 順子著         集英社

アメリカ映画でも、日本映画でも、最上級に善き事とされている『家族』について、『負け犬の遠吠え』の著者酒井順子さんが綴ったエッセイです。いつものごとく、大変面白かったです。

かなりショッキングな内容でした。まずとても驚いたのが、昭和28年(1954年)の平均世帯人員は5.0人、まだ3世代家族も普通にあり得た時代です。が、平成28年(2016年)の平均世帯人員は2.47人・・・なかなか衝撃の数字です。前年の2015年の『単独世帯』の全体に占める割合は34.5%で、これは『夫婦』や『夫婦+子供』世帯の割合よりも大きい、というか最も多い割合なのです。

つまり、2015年の国民生活基礎調査、つまり厚生労働省の調査なので、どこまで信用して良いのか問題もありますし、そもそも調査なので誤差もあるとは思いますが、大胆に言い換えると、

『日本で最も多い家族形態は、1名』

と言えてしまいます。

私は結構衝撃的でした。よく調べると、1番新しい国民生活基礎調査ではこんな感じです。

平成29年度調査

単独世帯           27.0%

夫婦のみ世帯のみ       24.0%

夫婦と未婚の子世帯のみ    29.5%

ひとり親と未婚の子世帯のみ    7.2%

3世代世帯             5.8%

その他の世帯          6.5%

という事になっています。

(厚生労働省HP 国民生活基礎調査 平成29年度 国民生活基礎調査の概要より https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/index.html

1位ではなくなっているとはいえ、やはり単独の世帯は27%を占めているわけです。

家族、を辞書で調べてみると(本当は新解さんこと「新明解国語辞典」で調べたかったのですが、今手元に無いので広辞苑より)、『夫婦の配偶関係や親子・兄弟などの血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団。社会構成の基本単位。』という事になっています。ですが、このまま少子高齢化が進むと、恐らく、社会構成の基本単位、という定義部分は変更せざるを得なくなるのではないか?と思います、何しろ1/3が単身世帯になるのですから・・・

著者の酒井さんも指摘されていますけれど{家族」という形態が変わりつつある、という事だと思います。例に出されているのが、サザエ+フク田家と、ちびまる子ちゃん家族です。どちらも3世帯家族で構成されていますけれど、実は1割に満たない家族形態、と言えるわけです。

では、なんで?核家族化が進んだのか?と考えると、どう考えても、便利になったから(コンビニとか)、そしてわがままになったから、だと思います。家族という軋轢もある集団を組まなくても生きていける世界になったからこそ、家族というか、もっと言うと婚姻関係の意味を見出すのが難しくなったからだと思います。嫁姑問題もそうですけれど。

私は嫁姑問題は運動部の部活での意味のないシゴキ問題と似ていると思うんですね。怪我の可能性のある、大変厳しい練習を潜り抜けたからこそ、同期の結束が強くなった、と感じている人は多いです、そのシゴキを受ける当事者の時は、無意味で危険と怒っていたにも拘らず、自分が指導する側に回ると、喜んで同じことをしてしまうんですね。男性は嫁姑問題に関係ない、と思いがちですけれど、さざえさんにおけるフク田マスオさんの立場になってみれば結構大変だという事が(それでも婿養子ではない)理解できると思います。磯野家におけるプライベートスペースは、ほとんどないんじゃないでしょうか?

少し前に、自民党所属の議員が子供の数について言及して、問題発言になっていましたけれど、昔の感覚、しかも井戸端会議的なモノであれば、そう騒ぐ問題ではなかったかも知れませんけれど、衆院議員の発言としては、基本的にアウトだと思います。というか国家が個人に対して、何人の子を産め、というのは無理な注文です。国家を構成するのが個人なのでどちらが主体であるか?は明確だと思います、個人的には。もちろん違う考え方の人もいると思いますけれど、どのように考えるのか?の自由も保証されているし、人生の選択は個人の自由であると思います。もし日本が子育てしやすい国であるなら、少子化になってないはずで、何処かに(贅沢だ、という人もいるかも知れませんけれど、結果として同じ)問題があると思います。

子供を産む前に結婚しなければならないとなると、まずその結婚が難しいと思います。誰の例えか失念してしまいましたが『車や冷蔵庫を購入するのと違って、簡単に変える事が出来ないから』というのは、とても個人的には納得してしまいます。誰だって失敗したくないし、失敗例の方が成功例を上回るほど、語られる場面も多い上に、成功例として多いのがたいていドラマや映画などのフィクションであるように感じてしまいます。

家族の形態、それは徐々に変わっていくものだと思います。今も、昔も、未来も、ずっと過渡期なんだと思います。戦後に3世代家族を止め、核家族化が普及したように。

テクノロジーが進化すれば、当然、生活が変わるわけで、知ってしまった利便性を無い事にするのは大変難しい事だと思います。恐らく、昔ながらの家族形態を維持するのが難しくなっているので、制度を変えていくしかないと思います。というか、個人が婚姻関係という制度を、どう捉えるのか?という事に尽きると思うのです。婚姻関係を結ぶ事に意味を見出す人がいてもいいし、そうでない形に拘りたい人がいてもいい。ただ、本人が望む形が望ましいので、あまり形に拘り続けると、では、単独でいい、という風潮になりかねないと思います。

家族、というモノについて考えてみたい方に、オススメ致します。

“「家族終了」を読みました” への1件のコメント

  1. […] かなか難しい話しになりますけれど、少し前に扱った酒井順子著「家族終了」(の感想は こちら )でも感じましたけれど、全世帯の1/3は、結果自分で単身者を選んでいる、というです。 […]

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