井の頭歯科

増村保造監督 その6 「陸軍中野学校」 を観ました

2020年5月12日 (火) 09:17

増村保造監督     大映

本当に、増村保造監督天才的。監督としてどんな作品でもかなりのクオリティに仕上げてくれますね。

今回はスパイもの。本当にジャンルに捕らわれない監督。

陸軍士官学校卒業で陸軍軍人であるミヨシ(市川雷蔵)は、婚約者ユキコ(小川眞由美)と老いた母と共に暮らしています。そんなミヨシは陸軍に呼び出されクサナギ中佐という人物にとても奇妙な質問をたくさん受けますが・・・というのが冒頭です。

まず、モノローグの落ち着いたトーンと、ニヒリズムまで煮詰めたダンディズムのような、市川雷蔵の声を含めた演技が凄いです。市川雷蔵、名前だけは知っていたスターですけれど、確かにスパイっぽく見えました。

市川雷蔵については、今後追ってみたいと思ってます。というのも、やはり私は歌舞伎、という家制度を持って本流とする芸能があまり好ましいと思えないからです。ちょっと伝わりにくいと思いますが、江戸っ子の『粋』って正直言えばやせ我慢で卑屈というフィルターを通した文化のように感じるからであり、もちろん歌舞伎役者にも素晴らしい人はいると思いますが、カブキという文化が好みではない、という事になりますね。そんな歌舞伎を、結局捨てた市川雷蔵に興味があり、事実、この映画は市川雷蔵でないと全然面白くなかったと思います。

不思議な役者さんだと思いますが、大変中性的でもあると思います。

また、大変な運命を背負う事になるんですけれど、その際の無理な演出をしない、大袈裟にならない、地に足の着いた演出がとても心地よいです。

ヒロインの小川眞由美さんも素晴らしい演技です。それにしても増村監督作品のヒロインは、今のところみな一様に、激しく悩んでいますね・・・小川さんももう少し追いかけてみたいと感じました。

市川雷蔵が好きな方、そして何より、戦争のある一面を描く作品だと思います。いわゆる敵性語として英語の禁止を国是として戦争にま負けた日本と、日本文化まで研究して、戦後の統治に生かしたアメリカでは、やはり全然違いがあると思いますし、個人的にはどう考えてもアメリカのやり方の方が合理的で目的的です。何で行うのか?何のために?がはっきりしているので目的を完遂出来る。とても合理的です。もちろん合理の無い所にも文化はありますが。

スパイ映画が好きな方に、オススメします。007をスパイ映画とするなら(もちろん私もスパイ映画の1つではありますが、なんかヒーローモノのように感じます)とてもイギリス的でアメリカ映画的ですが、この映画はまさに日本のスパイを育てる話しです。全く、全然、似てないけれど、なんか国民性を感じます。

“増村保造監督 その6 「陸軍中野学校」 を観ました” への1件のコメント

  1. […] 敵わない、という事の証明ですね・・・私は同じ増村保造監督で市川雷蔵主演の『陸軍中野学校』(の感想は こちら )を観ましたけれど、あの存在感は何処へ行った?と思う程です。 […]

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