井の頭歯科

「VIP 修羅の獣たち」を観ました

2021年7月27日 (火) 09:31

パク・フンジョン監督     クロックワークス

「悪魔をみた」(の感想は こちら )の脚本家、「新しき世界」(の感想は こちら )の監督、パク・フンジョンさんの作品です。結構な極限状態を描いた作品だと思います。ですが、私は今作は脚本に、もう少し、練り上げが必要だったと思います。決して悪くないんですが・・・

プロローグ 空港から降り立った男(チャン・ドンゴン)は後輩と思われる男から、車を借りてある店に立ち寄ります。そこにはアメリカ人であるポール(ピーター・ストーメア)が居て・・・というのが冒頭です。

章立てていますし、ある種の円環構造ですし、韓国ノワールとしてもなかなかな作品です。今回は三つ巴の争いを描いている、という事だけ理解していればまず問題ないと思います。

この映画のタイトルであるVIPは何を指しているのか?といえば、ネタバレには繋がる可能性もあるかと思いますが、どう考えても非常に問題のある、しかしなかなか手が出せないある人物の事、だと思います。

韓国ノワール作品をたくさん見ている訳では無いのですが、今の所、韓国ノワール作品のベストは「アシュラ」で次点で「殺人の追憶」です。

今作も、非常に意欲的な展開ですし、アクションもありますし、バイオレンス描写もあります、今回はぼかしさえありました。それも製作者側の意図なのでこれは問題ないかと思いますけれど、大変ヒドイ行いを逃げずに描いています。

ですが、私は脚本に少し問題というか、まだもっとブラッシュアップ出来たんじゃないかな?と思っています。ココはネタバレに繋がるので、後ほど。

ですが、三つ巴の戦いと言う意味では新しいですし、それぞれの役者に光が当たるシーンがあり、これは良かった。

国家情報院の一員であるパク・ジェヒョクを演じたチャン・ドンゴンの、成長というか変化、その凄みがイイですね。またキャラチェンジにメガネを効果的に使っているのも良かったです。

次いで警察の荒くれもので能力も高いが態度もデカいチェ・イドを演じたキム・ミョンミンの、その横暴さもさることながら、しかし綺麗事では済まされない場合の、緊急事態の、生命がかかっている場合の、覚悟、警察機構としての重要性がかかる事態だからこそ、の、覚悟があり、非常に魅せます。もちろん、そうはいっても越権行為でもあり、暴力的な犯罪でもある部分もかなり含まれますけれど。

さらに、ある組織からの脱出者リ・デボムをパク・ヒスンが演じていますけれど、この方も影が合って、それが良い感じです。寡黙で、しかし執念を燃やす男。ちょっとスーパーマンのような何でもできる男になってしまっているのが、実は脚本の弱さでもある気がします。

そしてこの三つ巴の中心にいるのがキム・グァンイル(イ・ジョンソク)です。まぁこの傍若無人ぶりが凄い。とはいえこの人も脚本の弱さを、この暴力性で補わなくてはならない点が可哀想な気もしました。やってる事は1mmも養護できませんけれど。

かなり複雑な脚本ではありますが、章立てているので、最後には分かるんです。

演技にも問題ないですし、アクションも悪くないと思いますが、やはり脚本が弱いと言わざるを得ないです。

韓国ノワール映画が好きな人にオススメ致します。

アテンション・プリーズ!

ネタバレありの感想です。

私だったら、ここまでやるのであれば、こうしたい!こうなって欲しかった!という勝手な想像を書き出してみました。

VIPこと、キム・グァンイルが屑な事はとりあえず皆様同意できると思いますが、この拘束の仕方、とても不満があります。彼の切り札は北朝鮮の親の、資産と情報であり、そんなものは口が喋れる、もしくは指で字が書ければ、何の問題もありません。この人物が行った行為に対してヌルいじゃすまないと思いますし、それだけの描写を入れるのであれば、私は最後のカタルシスが大切と言うのも分かりますけれど、その前に、人体破壊描写は合って良いと思います。要人かも知れませんけれど、口が情報を話せるのであれば問題ない程度の破壊は必然だと思います。本当にこういう部分がダメです。そこまでいかずとも、指を折るなどは暴力者の警察には行って欲しいですし、交渉のカードとしては生きていれば価値があるわけですし、この辺はもっと現実は悲惨だと思います。そのような対応をすれば防げた部分がこの映画の脚本では大きいと思います。私が残虐なのではなく、まぁシェイクスピア作品は古典とされていますけれど、シェイクスピアの作品に「タイタス・アンドロニカス」という作品がありまして、これを読んでいただければ、私の言わんとしている事が、私の残虐性ではないと思っていただけると思いますね。かなりの古典的作品で既に行われています、そういう意味でもヌルいと感じてしまいました。

また、確かに三つ巴は新しいし面白いのですが、いかんせん、個々対応なので、横の連帯感、バディ感が生まれません。ココが1番飲み込みにくいです。その為の退場シーン、警察官チェ・イドは詰めが甘すぎます。もっと痛めつけておけばここまでの状況には陥らなかったでしょうし、悪を裁く事にかけては何を行ってもイイという部分が彼の特徴なのに、この辺の人物像がゆるい感じがします。ただ、詰めが甘くて撃たれたことによって退場、に見えると、凄く冷めてしまいますし、自業自得に見えるんです。

同じように北朝鮮工作員としての脱北者リ・デボムはさらにヒドイです。結局連れ帰って北朝鮮での制裁、償いを負わせる、だから南では無理だ、と言っていた割には、連れ帰ってまでいるのに、あっさり買収されていたのか、彼の計画がずさんだったのか分かりませんけれど、評価として、詰めが甘くて、返り討ちに合って当然、に見えてしまうのです。ここまで拘ってきた相手に国家としての償わせる事に拘ってきて、法律も破り、脱北し、犯罪にまで手を染めた人物が、いったい何だったのか?と言う風に見えすぎます・・・残念です・・・

なので、国家情報局のパク・ジェヒョクがスパルタ方式に血も涙もない男に変わるきっかえとして、この2名の死が繋がらないのです・・・ここが本当に残念。

なので私だったら、もっと拘束されている間にVIPを痛めつけてでも、どちらにイニシアチブがあるのか?例えば警察であっても、国家情報局であっても、脱北工作員であっても、ある程度のリスクは覚悟の上で、VIPから情報を聞き出し、この情報を基に他者と交渉に入ろうとするグループを作ると思います。出来たら警察官のチェが1番面白くなると思います、1番権力構造から言ったら下っ端ですから。

それでもVIPと一緒じゃないと価値を持ちません、何故なら証明するには本人がいないと違った場合に対処できないです。ですので、その交渉にCIAの手先であるパク・ジェヒョクと交渉すると思います。ここで警察官チェとパク・ジェヒョクの間に連帯感が生まれるはず。その上で工作員と交渉して身柄は工作員に渡すにしても、情報と金は警察とCIAで山分け出来ます。さらに工作員がいきなり返り討ちなんじゃなく、VIPが怪我している事を責められての投獄、さらにVIPは落とし前の為に数年後に韓国に潜入、リターンマッチとして、パク・ジェヒョクとチェのタッグと再戦、その中でチェが撃たれてしまうがジェヒョクがかたき討ちを果たす、と言う風にすれば、もっと良かったのに。

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