井の頭歯科

ゴッホ展 響き合う魂 ヘレーネとフィンセント に行きました

2021年10月26日 (火) 09:39

東京都美術館

今回は久しぶりに東京都美術館にゴッホを観に行きました。行く前からオトナの教養講座も見ていましたし、映画は1本だけですけれど見ましたし、また書籍で面白かったのは「ゴッホの地図帳 ヨーロッパをめぐる旅」ニーンケ・デーネカンプ、ルネ・ファンブルグ、タイオ・メーデンドルプ著、千足伸行監修、ファン・ゴッホ美術館編集という大判の書籍を読めた事です。
この本はゴッホの生まれてから亡くなるまでの軌跡を地図の上で明らかにして、その土地でどんな暮らしをしていたのか?その時の手紙のエピソードなど、かなり細かく描かれていて、凄く参考になりました。
ゴッホについて知っている事は凄く少なかったのですが、少し予習出来たので、楽しく見る事が出来たのと、同行して頂いた方に大変美術にも、アートにも、音楽にも造詣深く、ヨーロッパに住んだことがあり、各地の美術館を訪ね、なんならゴッホが書いた病院まで実際に行って、その土地や建物にまで足を運んだ方とご一緒出来た事です。こんな事って今まで51年生きてきて初めての事だったので、大変刺激的で面白く、且つ興味深いお話しがたくさん出来ました。
ゴッホの生きた37年の中で最後期に書かれた絵である「カラスのいる麦畑」を描けたのであればある種の本懐を遂げたと言えるのではないか?というお話しや、オランダ時代には非常に暗い色合いが多く、弟を頼ってパリに出て来てから僅かその後の4年間しか残りが無かった事になるのですが、そこで印象派展の8回目である最後の展覧会を観て、しかもその中でもジョルジュ・スーラの点画に影響を受け、日本の浮世絵に衝撃を受けて、そして自分の絵を描き出したのではないか?という話しにも、大変感銘を受けました。確かに様々な歴史的な邂逅があって、この時期にパリにゴッホがいたからこそ、なわけで、非常に偶然性について考えさせられます。
ゴッホの絵に変化が起きた絵はなんだったのか?とか、テオとの関係性についても、全然知らなかった話しがたくさん聞けて、本当に新鮮な驚きに満ちた鑑賞になりました。人間の縁というものは不思議ですね。
ゴッホ展の中では、割合最初の方にあったアンリ・ファンタン=ラトゥールの静物画『プリムローズ 洋梨 ザクロ』が凄く気に入りました。この方の絵は今後も観ていきたいのですが、どうやら日本にはあまりないみたいです。残念。
次に気になったのは、オトナの教養講座を見ていますし、実物と言う意味でもルドンのキュプロクスです。私はどうやら、印象派よりも写実派で、象徴主義的な傾向を好むみたいです。
ゴッホの中では、特に、やはり糸杉の「夜のプロヴァンスの田舎道」が凄かった。まるで本当に、動いて見えます。そして、何となく、ですが、ゴッホはスーラの絵をみて点画を学び、浮世絵を観て輪郭を描き、その上で、点ではなく動きの軌道を見せるうねりを線で描いたのではないか?と感じました。きっとみんなが想ってるとは思いますが(笑)私にはゴッホのうねる線がスーラの点なのではないか?と感じたのです。
ゴッホの画家としての評価は、恐らくこれからもずっと続くのではないか?と思いますし、実際の「夜のプロヴァンスの田舎道」を実際に観るのと、動画でもカタログでもを観るのは全く別物である、という事が肌感覚で理解出来ました。そして、ゴッホは生前には1枚しか絵が売れなかった、確かにそうだと思いますし、天才という人は同時代には評価されがたい存在であるとも思います。でも、それだけに、私は弟のテオの存在がとても切なく感じます。決して裕福ではなく、兄を尊敬もしているけれど、仲たがいする時期もあり、一緒に暮らしても辛さを味わい、そしてゴッホが亡くなってその責任を感じ、病気もあるのでしょうけれどゴッホの死後6ヵ月で息を引き取るテオ。テオが居なかったらゴッホだっていなかったと思います。それに、ゴッホはテオの手紙をすぐに燃やしてしまっていますし(テオはもちろんとっておいたからこそ書籍化されている)、テオの手紙を書籍化するのにはテオ奥さんが尽力されたからだという事も理解した上で、それでも、私はテオの存在に非常に心打たれます。
きっと画家でも作曲家でも映画監督でも作家でも、偉大な作品を生み出す人々の影には、パトロンと簡単には呼べない、たくさんの人々がいるのだと意識させられます。
美術館では誰とも喋れないですけれど、出来たら、その衝撃が残っている間に、誰かと話してみたい、と感じるようになりました。次は、あの修復されて新たな部分が露わになった、フェルメールに是非ご一緒させてください、というお約束まで出来たので、次も楽しみです。

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