井の頭歯科

「Once Upon a Time in Hollywood」を観ました

2019年9月7日 (土) 09:20

クエンティン・タランティーノ監督      コロンビア

今年公開映画の中でも個人的に1番期待値の高い作品だったので、すっごく楽しみにしてましたし、期待値を上げ過ぎないようにしてましたけれど、まぁタランティーノですし否が応にも上がってしまいますね。そんあ私の期待値の斜め上遥か彼方まで面白かった作品です。

1969年2月、テレビ西部劇俳優のリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、自分の専属スタントマン兼親友のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)と、大物プロデューサー・シュワーズ(アル・パチーノ)に会いに酒場に出かけるのですが・・・というのが冒頭です。

タランティーノ監督、とても変わった監督さんですが、映画ファンからは絶大な信頼を置かれている監督、だと思います。それもスノッブじゃない、割合マニアな人の中でも、映画好きな人は大抵好きな監督のうちの1人に名前を挙げる率が高いと思います。本人がレンタルビデオ店員から監督になった方として有名ですし、世界の様々なマニアックな映画を観られている映画中毒者として有名ですし、好みが変にお高く留まらないのが、映画ファンの心をつかんで離さないのだと思います。そして、個人的には編集の面白さ、で出てきた方だと思います。とにかくエッジが効いている、時間軸をいじる監督として、最初は認識してました。

それが、この映画では、さらに進んで、とてもサンプリング色の強い作品に仕上がっていると思います。そのサンプリングの元ネタに敬意を払いつつ、サンプリング元を自分で製作した上で、サンプリングする、というメタ構造を展開しています。つまり、この映画で言えば、本当に、1969年の街並みを作り上げ、そこに当時の車を走らせ、当時のテレビを流し、当時の映画を流し、宣伝ポスターも再現、しかもそこにサンプリング元を作り上げて行っているんです。当然拘りのあるラジオ音源も、です。服装も、その当時にその場に居た人物の佇まいまでも作り上げています、まぁ私がその場に居たわけではないのですが、その当時のヒッピーカルチャー含め、雰囲気が本当に素晴らしいです。これは、モチーフとしてアルフォンソ・キュアロン監督作品「ROMA」(の感想は こちら )そっくりです。それが、ノスタルジーを含みつつ、それでも、タランティーノ作品に仕上がっているのが最高なんです。

普通、街並みを再現するとしても、恐ろしく大変お金がかかります。当然360度カメラに収まるわけでは無いので、ある1方向から見て再現出来ていれば、まず問題ないはずであるのに、あえて、逆方向からのカットも含めて、本当に360度の街並みを作り上げています、ココ本当に凄い所だと思います。街並みだけでなく、本当に細かなデティールまで、もちろん1度の鑑賞ではすべてを掬い取って見て取れたわけではなりませんが、かなり細かいですね。これから、何度も何度もの視聴に耐えうる強度を持った作品に仕上がっているのは、1度の鑑賞でも十分に感じられました、映画内映画の劇場用ポスター含め宣伝、そして架空の人物である主役の2人の出演作まで(サンプリング元を作るってそういう意味です)、本当に細かいです。

そして、宣伝でも使われてしまっているので言及しますけれど、チャールズ・マンソンの起こした事件、シャロン・テート事件を扱っています。ここは何を言ってもネタバレになってしまうので伏せますけれど、シャロン・テートを演じたマーゴッと・ロビーが最高に美しいです。簡単に、美しい、という言葉を使いたく無いですし、そもそも人の美的感覚は千差万別です。

ちょっと脱線しますけれど、私は本作でブラッド・ピッドの上半身の裸が出るシーンがあって、もちろん見事に鍛え抜かれた50代の男とは思えない、素晴らしい肉体美だとは思います。肉体美という要素はそれこそ様々で、おそらく、ヌードに近ければ近いほど、その肉体美の価値(たゆまぬ努力のたまものであり、恐らくギフテッド的なモノでもある)があると思うのですが、その事だけ言及するのって、ちょっとどうなのか?と思います。そういう人が居てもいいけど、これだけセクシャリティ的に平等を求めていくのであれば、男性の裸への言及があってもいいなら女性の裸への言及も許される事にならないと変な感じがします。美意識や美しさは人それぞれでいいけど、そのことを言及する時は気をつけたい、という事です。今回のブラッド・ピッドが脱ぐ必然性があるんですけれど、そこがあるかないかも大きいです。昔であれば、女性のヌードへの言及はもっと直接的だったので、その反省も込めて。そして何を猥褻と捉えるのか?という事なんですけどね。要は他人(おそらく女性)の感想でブラピの裸が1番!とか言ってる人が居て、それって〇〇(女性の名前)の裸が見れて最高!って言ってる男の人の感想と同じで、どうかと思うよ、と言いたかったってことなんですけれどね。

閑話休題

とにかく、お金がかかってるのは間違いないですし、そのお金のかけ方が、とてもタランティーノ的で、最高です。すっごく限定的な例えになりますけれど、矢作俊彦著「あ・じゃ・ぱん」のような映画だと思います、知ってる人にはネタバレになってしまうのですが・・・

また、キャリアの下り坂を認識したリック・ダルトンの苦悩、そしてその事で打ちひしがれる姿を晒すディカプリオの演技も素晴らしかったです。ある意味今のディカプリオが感じていてもオカシクナイ感情だと思うからです、それは下り坂という事ではなく、肉体的に難しかったり、同年代の俳優の憂き目を目撃したりしていると思うからです、自身のキャリアではなくて。ディカプリオの演技は、やはりラッセ・ハルストレム監督作『ギルバート・グレイプ』の時の衝撃が忘れられないのですが、『ジャンゴ』を経てかなり変わったと思いますし、今回も目を細めて踊るシーンの演技、最高だったと思います。レオナルド・ディカプリオは今後どんな俳優になっていくのでしょうね。今作を既に観た方の感想で『演技が下手な役者の演技をする、というすっごく難しい事をやってのけた』とおっしゃってるかなりの映画マニアの方の意見が忘れられないですし、全く同感です。

そして、やはりブラッド・ピットはカッコイイし、この映画でも、とてもおいしい役どころですね。本当に、この人のキャリアは凄いの一言です。かつて、2枚目として比較されたロバート・レッドフォードに勝るとも劣らないと思います、今回のあるシーンではオマージュなんじゃないかと思う程、レッドフォードに似てる!と思わせるシーンがありました。レッドフォードの引退作品も早く見に行かねば、ですが。最近は本当においしい役しかやらないブラッド・ピッドですが、この映画の中では、もっとも 大人 に見えましたし、あのヒッピームーブメントの中での、大人だと思いました。タランティーノ映画における良心を体現している、とまで思ってしまいました。役得!

マーゴット・ロビーの美しさ、その自由さ含めて、大変シャロン・テートに合ってると思います、そして、あえて何もしないあの映画のシーンを挿入するのって、とても粋な計らいだと思います。ただ、どうしても、眉を顰めるようになると、シャロン・テートからマーゴット・ロビーに戻っちゃう感じもありました、そこが惜しいなぁ。でも本当に純真な感じ(あくまで、感じ、にして見せているのが!)が最高です。

この映画が、映画館でしか見られない今ではなく、家で観られるようにソフト化された時、この映画の素晴らしさは、また別の段階に入ると思います。私はとてもコーエン兄弟監督作品『ビッグ・リボウスキ』的な映画だと感じました、もちろんタランティーノが作ったビッグ・リボウスキ的な、という意味で。お酒を飲みながらただ流れている映画として最高の映画の1本になると思います。

最高に贅沢な、ゴージャスな映画です。タランティーノ映画の到達点とも言うべき作品。アルフォンソ・キュアロン監督作品の「ROMA」、コーエン兄弟監督作品の「ビッグ・リボウスキ」な作品。これ以上ないほど私にとって贅沢な作品でした。

欠点は、短い、という事だけだと思います。

タランティーノ監督が好きな方に、強く、強く、強く、オススメ致します。

アテンション・プリーズ!!

ここからネタバレありの感想になります。こういう映画こそ、何も情報を入れないで観に行くべき作品ですので、未見の方はご遠慮ください。

私は1969年2月のシークエンスが最高だったと思います。特に何が起こるでもない、しかし、リック・ダルトンにとっての日常、キャリアの下り坂を意識しだした男の、憂鬱な日常。ハリウッドに観光客ではなく、家を持ち、生活する自負を持った男の、認めざるを得ない陰り。1人では認める事さえ出来たであろうか?という不安に右往左往するリック・ダルトンの悲哀、その見事なまでにダメっぽい姿、最高です。そしてバディとして、影から何もかもを支えるクリフ・ブースの強さ。その彼でさえ何も持っていない(いや、クリフにはブランディがいる!!!!!)、しかし弱音は吐かない大人の態度。そんな2人が  生きている  1969年の街、ハリウッドの日常を、隣家の上り坂のロマン・ポランスキーとシャロン・テート夫妻の派手な部分も交え、確かに居たハリウッドの人々の日常を綴ったシークエンス、最高に贅沢な時間だと思います。

これから何度も見かえすことになるな、と映画館で予感しました。すっごく贅沢な時間が流れ、贅沢な画面が続き、贅沢なキャストで固められています。ブルース・ダーン、アレクサンダー・ペイン監督作品「ネブラスカ」(の感想は こちら )の時みたいな感じでいいですね!僅かな出演シーンでしたけれど、味があります、盲目なのにテレビドラマFBIを見ないとカミさん(?)の機嫌が悪くなるのを気にしてるって、ドユコト?と思いつつも、分かる作りになっています。アル・パチーノ、ノア・バームバック監督作品「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」(の感想は こちら )のような老人役多くなってきましたけど、とても良かったと思います。ダミアン・ルイス、全然知らなかったですけどちゃんとマックイーンに見えましたよ!凄い、こういう人が居て、ちゃんとキャスティングされるのが凄いですね。あと忘れちゃいけないのがブルース・リーを演じたマイク・モーさん。この人とクリフ・ブースの対決、誰もがブルース・リーが勝つと思ってしまうミスリードを、まさに衝撃的に壊して見せるの、サイコーでした。ホント最近のブラッド・ピットは美味しい役しかしないなぁ。

また、このキャスティングに絡んで、恐らくタランティーノ監督が大好きだからなんだと思うけど、ジョン・スタージェス監督「大脱走」のシーンの中にわざわざディカプリオを入れて明らかに遊んでいるのが、流石タランティーノ監督!って思いました。ここまで拘ってCGを避けて、サンプリング元を作って、義史を作り上げる作品なのに、この遊びの部分だけは思いっきりCGで遊んでますよね?面白かった~

それと、子役の人、この人もこんな難しい役を本当に8歳なのか知りませんけど、目の演技が凄かったし、その子役にあえて、演技論を語らせて、その後に、わざわざセリフを忘れて怒り狂うディカプリオのシーンを入れるのが、イジワルで最高です。この子役の人はこれからも注目です、まぁハリウッドの子役が上手く行かない話しは散々いっぱいありますけれど。このディカプリオのセリフ間違うシーンのカメラワークと同じことを、あえて車のシーンでも取り入れていて、ココすっごく難しいはずなのに、しかもセットの事考えるとただ単に予算もかさむし、相当思い入れあるのかな?とも思いますけれど(私が気が付かない何かのシーンのオマージュとか)、実際、何となくですけれど、タランティーノ監督の遊び心な気もします、意味のない遊び心シーンなのかなって。

プッシーキャット役の人はなんか見た事あるなぁ、と思っていたら、やはり思い出しました、これは大好きなシェーン・ブラック監督作品「ナイスガイズ!」(の感想は こちら )のヒロイン(はアンガーリー・ライスでした、保護対象者役)でしたね!大変印象に残る少女役で良かったですし、ヒッピーとしていそうなオーラがあってそこが良かったです。仲間の中でも立ち位置が難しいですし。またこのマンソン・ファミリーの、もっと簡単に言えば、いわゆる有名じゃない、メンバーの描写が、その男女比がやはり面白かったです。割合有名なグループですけれど、やはりあくまでマンソンの個人的なグループって感じが強かったですけれど、よく考えると、不思議なグループです。

結局イタリアに出かけ、あれだけリック・ダルトンとして嫌っていたマカロニウエスタンに出演する事になり(注・ワケあって、個人的に幼少期に叩きこまれた西部劇知識というモノが、刷り込まれて、頭の中に存在するんですけれど、西部劇ウェスタン愛好者は、マカロニウェスタンを蛇蝎のごとく嫌う傾向があります あくまで 個人の見解ですけれど )、マカロニウェスタンの主役を務めた事でそれなりの自信を回復したリックが空港へ降り立った後、奥さんの足にまとわりつく布の揺れ加減と音楽のビートの合い方が、めちゃくちゃカッコ良かったです。これはエドガー・ライト監督作品「ベイビードライバー」の効果と同じですね!

そして、ここから、これまでの日常から、非日常タランティーノにギアチェンジします。ここがサイコーでした。急にナレーション入ってくるし、違和感もあるけれど、それよりも、ワクワク感が勝ってしまいました。私はココに、この作品の肝があると思います。

よく言う、この設定が乗れなかった、この人物が嫌だった、何でこうなるのか理解できない、といった事を私含めて、よく映画の感想で(まぁ別に映画じゃなくとも、本でも演劇でもなんでも可)聞きますけれど、それって、そこまでの、舞台設定なり世界観に没入させることの出来なかった作り手側の問題があると思います。あくまでリアルな(ファンタジーでも同じで、その映画の中のルールを含んだ世界観に)観客が没入出来れば、細かな点や矛盾なんて、そんなに気にならなくなりますし、そもそもそういう矛盾を含めて、作品を愛してくれると思います。この没入までの世界観が上手く作用する人には、この映画体験は何にも勝ると思いますし、長い、と感じる人には、そもそも受け付けない感じになると思います。例えていうのであれば、最近割合長かった映画ですと「ブレードランナー2049」(の感想は こちら )も同様だと思います。なんというか、この日常の描き方、太陽の光の加減から、セットを動かしている人から、リック・ダルトンに控室の場所を教える為だけに出てきたオジサン含めて、好きになってしまえば、だいたい何でも受け入れられます。

マンソンファミリーの中でも東洋人っぽい女の言う「テレビの中で人殺し(の演技)をして稼いでいる奴らを殺して、金を盗む」というのは、事実に即しているのか知りませんが、すっごくタランティーノ監督が言い回しで使いそうで、グッと気持ちが上がりました。そう言った女のその後の顛末で、私は不謹慎な笑いを、大いに楽しみました。まさかここでアレが伏線回収になるとは思いませんでしたし。まさかの偽史モノとは思いませんでした。こんな展開でシャロン・テートが救われるとは。でも、生きたシャロン・テートの作品が、こんなにたくさんの映画館で、実際に流して見せた、という事実を考えると、やっぱりタランティーノ監督サイコーです!

リック・ダルトンとクリフ・ブースのバディ関係ですけれど、あんまりバディ感は少なくて、完全にリック・ダルトンがクリフ・ブースに助けられてるように、見えます。もちろん、金銭面ではリック・ダルトンの方が上なんでしょうけれど。初っ端の車を回してもらう駐車場でのハグはまぁお約束のサービスショットとしても、その後のサングラスを貸すクリフ・ブースにヤラレテしまいました。うん、こういう人は誰にでも好かれるて頼られるんだけど、絶対自分は誰にも頼らないんだよね。

あと、犬のブランディ!この犬が最も強かった!それに、クリフ・ブースの本当の相棒は、リック・ダルトンじゃなく、ブランディだ、という事が、この映画の良心な部分だと思いました。しかしブラッド・ピッド、美味しいね!

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