https://www.youtube.com/watch?v=DqxmNFwkXxw
小林正樹監督 東宝 U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 43/115
追悼・仲代達矢さん3
黒沢明監督とももちろん違いますし、成瀬己喜男監督とも違うけれど、小林正樹監督の仲代さんは、まさに鬼気迫る感覚があります、それも徐々に。
侍(三船敏郎)が剣を構えて藁人形を斬って、その剣の状態を試しております。殿様に奉納するのですが・・・というのが冒頭です。
主演は三船敏郎で、仲代さんはその相手訳、となると、凄く椿三十郎っぽいのですが、まぁ、そうです。
そして、同じ小林正樹監督の名作「切腹」のように武家社会の掟、決まりの中で個人が生きる話しでもありますが、今作が違うのは、中でも女性に光が当たるところです。
この時代、と言いたいけれど、恐らく2025年の今でも、頭の中は同じ男性のおじさん、まだいますよ、恐ろしい事に。そして自分が普通だと思っているし、血の系譜に拘る人、まだいます・・・武家社会だって普通に養子取ってるし、名家とされる松平でさえ血なんか繋がってないんですけどね・・・そして今作の主人公三船敏郎が演じている笹原伊三郎は婿養子で肩身が狭い描写は数あれど、恐らく、女性は嫁としてもっとヒドイ扱いを、恐らく全員が受けています。
そんな家制度の矛盾を鋭く突いた流石小林正樹監督作品で、その中の仲代さんの演技がまた鬼気迫ります。
常識を備え、冷静沈着で、しかし掟には背けない。仕事は忠実。この映画の中で、恐らく仲代さんはその目が特に印象深いのですが、まばたきを1回もしてないんじゃないでしょうかね・・・本当に人を斬った事がある侍を感じさせる、存在感と圧倒感があります。
そして何と言っても相手側の側用人を神山繁さんが演じられていて、見事。相手が立たないと、主人公が立ちませんし。
そして様々な不穏、不安、不義理、不条理が積み重なり、ついに、というクライマックスまでの積み重ねが本当に緻密。脚本として素晴らしいし、その積み重ねた上での爆発を、感情だけでなく、絵でも、そしてアクションでも魅せる小林監督は本当に素晴らしいです。もちろんやはり切腹が凄すぎて、そして仲代さんなら間違いなく切腹の方が、津雲半四郎の方が素晴らしいのでしょうけれど、今作も凄い。
小林正樹監督作品の仲代達矢さんの鬼気迫る顔での侍が見たい人にオススメします。