井の頭歯科

「ザ・ホエール」を観ました

2023年11月7日 (火) 09:27

 

ダーレン・アロノフスキー監督     A24 キノフィルムズ     U-NEXT

映画好きの友人さんからのオススメで、観ました。

Webの講座で生徒に対して講師がエッセイの書き方について話していますが、講師のカメラは壊れているのか?映っていません・・・というのが冒頭です。

ブレンダン・フレイザーさんが主演なのですが、私はこの人の映画を初めて見ると思います。

基本的に、私は家族の話しが、それもアメリカ映画の家族の話しが、あまり好きではありません。ハリウッド映画で言う家族愛の話しは、そこまでして存在を肯定しないと崩れかけない状況にある、という事だと思いますし、血の幻想はとても強いと思います。もちろん全世界的にそうなのですが、血脈という幻想があるように思われます。

家族最高!

という事にしておかないとイケナイと思い込もうとしている、という感覚を感じる、という事です。

ちなみに、うちの国だと、殺人事件は家族(親戚含む)間で4割強で最も多い数字です。

今回はキリスト教徒の中でも全然よく知らないニューライフという団体も出てくるので、これも良く分からないままに観ましたけれど、終末思想に特化しているようです、なんともよく分からないのですが。

脚本、恐らく、主人公であるチャーリー(ブレンダン・フレイザー)に共感出来れば、味わい深い感覚もありますけれど、ちょっと違和感あります。

また、演者はどなたも凄く良かったのですが、チャーリーの唯一の友人であるリズを演じたホン・チャウさんが、凄く良かった。なかなか看護の雰囲気を出せる人っていないと思います。ミッシェル・フランコ監督作品「ある終焉」のティム・ロビンスは完璧だったと思いますが、今作のホン・チャウさんもかなり良かった。

でもこの人が出てくるだけで、アレキサンダー・ペイン監督「ダウンサイズ」の中の8つの話しを、どうしても、思い出してしまいます・・・

もし、自分が死の床についていて、希望があり、それが叶えられるとして、それで行動を起こす。ささやかだけれど、行動を起こす。

しかし、当然これまでの積み重ねが自分で、その行動の余波を、他者は受けていて、その結果、自分との関係性が発生していて、発信者と受信者で考えが違うわけで、なかなか難しい。

非常に恵まれた男の話し、とも言える。

ネタバレ無しで話せる事が少ないのですが・・・・

いつか、だれかが、私と会話している時に、やむにやまれず起こした行動に意味がある、という発言があったと思うのですが、だいたいにおいて、やむにやまれず行動を起こしていても、どうにもならない事って多いと思っています。

関係性に興味のある方に、オススメします。

 

 

アテンションプリーズ!

 

ここからはネタバレありの感想ですので、本作を未見の方はご遠慮くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この脚本は、個人的には少々あざとい、と感じました。作為が直接的過ぎる気がします。

 

 

 

 

設定はかなり好みの話しなんです。場面は一か所ですし、登場人物も少ない、所謂会話劇です。演劇的とも言える。 なにより終末期の話し、死の話し、好物と言える。

 

 

確かにチャーリーの痛手、その深さはかなりのモノがあったでしょうし、過食症だって病気なんです、治した方が良い、とは思いますが、Point of no Returnを過ぎてしまうと、羞恥心もあり、病院に行く事も出来なくなるの、分かります。例えとして良くないかも、ですがラッセ・ハルストレム監督作品「ギルバート・グレイプ」のお母さんですよね。私はあのお母さんに対しての、息子の判断を支持します、私だってそうして欲しい。

 

 

 

 

でも、8歳で別れた娘との絆を取り戻す、という望みは、大変厳しいとも言えます。8歳から16歳というのは、ただの8年間と違って、かなり変化が大きい。

 

 

 

 

だから、死に際にあるからと言って、自分の人生が無駄でなかった証拠としての血の繋がりを求める、というのは、本当に善き事なのだろうか?と思うのです。

 

 

 

 

もちろん、何も考えなければ、そういう選択肢も出来たかもしれない。人生によく言われる遅すぎることなど、何もないかも知れない。行動、試す事無しに何も解決しない。ある種の事実だとも思いますけれど、私はそれまでの行動の積み重ね、結果が今の自分だと言える方が、潔いと思ってしまった。

 

 

 

 

だから、リズやWebの講座を受けに来ている生徒を大切にすれば良かったのに、と思ってしまった・・・

 

 

 

 

ピザの配達人と、関係性を結べば良かったのに、と。

 

 

 

 

それでも、家族、血縁を、チャーリーは選んだわけで、その結果が報われなかったとしても、きっと後悔は無かったと思います。

 

 

 

 

それと、大人、成人が何時、死を迎えるか?は、本当は自分で決めても良いと思います。ただし、精神的に参っている場合、誰しも死を想像すると思いますし、タイミングが、偶然が重なって、行動を起こしてしまう人も居るでしょう。今なのか?を自問し続けられた人が選択した場合は止められないと思います。

 

 

 

 

チャーリーは選択しているというよりは、自暴自棄に見えますけれど。

 

 

 

 

ニューライフの少年、この映画に必要だったのか?凄く疑問。

 

 

 

 

娘は悪意しか無かったと思うし、それが善き事に繋がった、というのは、そりゃ少年の身からすればの話しで、褒められる話しじゃないし、他人を被写体に収めて勝手にSNSに投稿、全然褒められる行為じゃない。この娘はかなり悪意を感じる。こういう輩が行動した結果、1つ良い事があった、としても、それ以外に5000くらいの悪事と嘲笑とエゴイズムと見下しと自己承認欲求を優先させた純粋な悪意があると思う。そして、それに対する反省も謝罪も後悔もしていない。

 

 

 

 

育ての身近な母だからこそわかる事だし、8年間あってないチャーリーが、良い子だと思うのは、自己欺瞞だと思う。そうであって欲しいという願望に過ぎない。

 

 

 

 

それに伴い、娘の今後を考えると、まるで自殺ほう助の感覚を呼ぶ可能性がある。自らここまで歩いて来なさい、と言った伏線含めて。急に良い子に変容するの、ちょっと違和感あり過ぎた。

 

 

 

 

ただ、彼女のエッセイ、確かにイイ文章だと、私も思う。

 

 

 

 

もし、チャーリーが白鯨で、それを撃つ事で人生が変わると信じるエイハブが娘なのだとすると、というのは考えすぎなんだと思うけれど、それはそれで、キツイ。

 

 

 

 

 

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